抄録
国土の7割を森林が占める森林国でありながら、日本各地域の森林は、多くが荒廃の危機に瀕している。より良い森林環境を取り戻し、持続可能な森林管理体制を確立することが、今日、急務となっている。本研究は、入会慣行という日本における伝統的な森林管理システムに注目し、その特質や今日的価値に関して論究を行うことを目的とする。山武林業で名高い千葉県山武市における現地調査を通して以下を明らかにした。(1)山武市における林野荒廃は、地域住民の森林に対する意識低下と、土地所有者のみが森林管理にあたらなくてはならないという構造に、大きな原因がある。(2)山武における入会慣行は、人びとが森林を共同利用するために必要な規範を醸造するものであり、それ自体が森林を継承するための優れた方法であった。(3)持続的な森林管理のためには、森林に関する意識共有とコミュニティ醸成を手がかりに、地域生活者をその担い手に据えることが肝要である。