フリーペーパーを用いた地域マネジメントへの寄与の可能性

抄録

我が国では住民自治による社会システムのあり方が模索されている。しかしその一翼を担う地域コミュニティにおいては、都市資産の所有・管理・利用が一体化していないことが課題となっている。本研究では、これらの行為が一体化することの方法論として、フリーペーパーの役割に着目し、理想的な媒体のあり方について検討を行うこととする。
数量化III類によりフリーペーパーの特徴を分析したところ、記事などの構成として「多交流」であることと「属地」であることを同時実現しているものは多くなく、むしろ対照的な要素であることが明らかになった。一方で、地域における都市資産の所有・管理・利用を通じた包括的な地域マネジメントを実現するための媒体に期待される役割は、地域内外の住民同士の交流の活性化を促す「多交流」の性質と、地域情報が充実した「属地」の性質であり、これらを同時に実現することが鍵となる。
近年のフリーペーパーは編集者と読者の混在が始まっていることから、フリーペーパーが地域マネジメントに寄与する際にも、所有・管理・利用のいずれかの行為者が編集者となり、読者としての他者を取り込むスキームが有効であるものと思われる。