抄録
本研究は江戸初期から中期(1603~1730年)にかけて製作された墨書のある懸硯を中心に、 時代別による様式の特徴と変遷を考察したものである。 考察した結果、1640年頃から登場する大坂の懸硯は京の懸硯から発達したと考えることができ、 外部の用材はキリかスギが主に用い、平均幅327・奥行432・高さ386mmのサイズで時代別による変化はなかった。 特徴は戸の中央における帯金具の意匠であり、1640年前の京的な懸硯は縦帯の上下が幾何紋のⅠ字型であったが、 1640年頃に大坂人によって縦帯の上下が瓢箪紋の十字型に変化した。 更に、蝶番で用いた紋様と類似の紋様を1660年以後には帯金具の上下に透彫することで、屋号で用いたことが明らかになった。