抄録
本研究では、地域におけるデザインプロセスの考察として、筆者らが直接関わった地域のつながりと価値醸成に関する二つのプロジェクト:「土と人のデザインプロジェクト-ゼロから晩餐会をデザインする」(名古屋芸術大学)と「芝+三田マガジンラボ」(芝の家)を取り上げ、参加者がどのようにプロジェクトを進め、その展開に影響した要素は何であったか検証を行った。その結果、それらのプロセスにおける特筆すべき特徴として、プロジェクトの「場」「モチベーション」「目的」における「変化」の持続的な共有に注目した。事例では、従来のデザインプランニングでは敬遠されてきた予期せぬ変化を許容し、むしろ積極的にそれらを資源とすることにより、結果的にプロジェクト内外に好ましい影響を生み出していた。また、プロジェクト自体が予め変化を積極的に期待する柔軟な仕組みを有していたことで、参加者自身の主体的な関与を促し、プロジェクトをより対話を通じて共につくりあげる性質のものとしていた。地域において、また、広く現代の複雑で予測不可能な社会において有効でありうる、「変化の共有」が重要な要素となり展開されるデザインプロセスの可能性を概説する。