本研究は、主観評価と生理指標の観点から、好感の持てるイラストレーションの表現方法を明らかにする事を目的として予備的な検討を実施した。写実的表現の眼のネコ、簡略的表現の眼のネコ、その中間の表現の眼のネコの3種類のイラストレーションを見た時の脳波事象関連電位P300、N170の振幅と潜時を解析し、主観評価による印象評価と生理指標の関係性を探った。また、明瞭な輪郭線のネコ、輪郭線の無いネコ、曖昧な輪郭線のネコのイラストレーションでも同様の実験を行った。いずれも、トラでも同様の実験を行った。 その結果、脳波事象関連電位の潜時や振幅と印象評価の一部に相関関係があることが示唆された。さらに、ネコとトラでは、好感に影響を与える表現が異なり、ネコの場合は簡略的な表現が最も好感の得点を得られたが、トラの場合は、野生動物のイメージが大きいためか、簡略的な表現だけではなく写実的に表現した場合においても好感を得られるという結果となった。 表現の違いが好感に影響を与える可能性があることは示されたが、好感の持てるイラストレーションを描くためには、対象により表現を使い分けるべきである可能性が示された。