抄録
自閉症スペクトラム(以下ASD)は感覚統合に問題を抱えている. これは感覚処理の過程による世界の認知が定型発達(以下TD)と異なることを意味している.
筆者はASD の感覚経験をシミュレートする研究を進めている.本研究ではASD の感覚特性に着目し, その聴覚をシミュレーションする装置を制作した.
本制作によって制作された装置を使って子ども向けのワークショップを実施し, インタビューをしたところ, 彼らの多くが自他の感覚が曖昧になるような経験をしたことがわかった.
筆者はASD を健康や健常へと向かうべき存在として捉えるのではなく, この世界の多様な在り方をTD とは異なるやり方で捉えている存在であると考えている.
この世界は多様な世界像のスペクトラムで出来ている. 筆者は, このような多元的世界像に基づく世界構築の方法を探求している.