今日、日本の地方圏の多くにおいて、急速な過疎化・高齢化をはじめ、里山や耕作地等の放棄などの多様な問題が顕在化している。こうした人口の減少・転出と地域資源の放棄といった悪循環は、これまでなされてきた「上からの」「外発的」な地域振興策では断ち切ることは困難であり、代わって、地域固有の資源やその使われ方などを地域の「宝」と位置付け、生活者が自らの手で地域の風土に応じた「内発的地方創生」を展開することが求められている。本研究は、その一手段としての「地域通貨」の可能性を検討したものである。地域通貨とは、人びとが自主的に設計・発行・管理し、特定地域・コミュニティ内でのみ流通する利子が付かない「お金」であり、また、人びとをつなぎ合わせ、共通の価値や関心を表現・伝達・共有するための媒体でもある。本研究は、地域通貨を「地域資源の循環ツール」と捉え、アンケート調査に基づき、これまで実践されてきた地域通貨の運営実態および地域資源の活用状況を把握した上で、代表的な事例を取り上げ、それらに対するさらなる調査・考察を通して、「内発的地方創生」に寄与する地域通貨のあり方の指針を導出することを目的としたものである。