サービスやソリューションの開発において、エクスペリエンスデザインという観点からトータルな体験をユーザに提供しようという試みが広まってきている。これに対して意図した体験を提供できているかを回顧的な調査によって評価する方法が提案されている。一方で、サービス開発の中で形成的に体験評価できる試みは多くはない。本文では複合メディアサービスの開発を題材として、形成的なエクスペリエンスデザイン評価方法に関してトライアルを行った。1つ目のトライアルでは専門家によるウォークスルー評価で、自由記述による体験談をSNS上で共有した。この結果、評価者の専門性による偏りや文脈情報のばらつきなどが見られた。この課題に対して評価シートの導入及びそれを活用するための形成的評価プロセスを提案した。評価シートは「意図の形成」「体験の記録」「リフレクション」の3つの構成からなり、ある程度十分な体験の記録を収集でき、ばらつきを減少させることができた。さらに体験記述の共有をベースとしたワークショップの開催は「体験のリアリティ」に基づく課題の抽出/価値の発見/次へのアイデア導出を促進した。