抄録
環境問題や資源問題といった現代社会が抱える課題や,ユーザの持つ精神的充足感への欲求に応えるためのデザイン方法論の一つとして,価値成長デザインがあげられる.価値成長デザインとは,時間の経過に伴う価値の成長を目指すデザインコンセプトであり,タイムアクシスデザインに基づくものである.本研究では,タイムアクシスデザインの実現に向けて,人工物とユーザそれぞれに基づく分析とその統合を行い,価値成長の構造を解明した.人工物に基づく視点として,人工物の備える性質に注目して分析を行い,6つの価値成長の手段的要因を得た.また,ユーザに基づく視点として,ユーザの認知に注目して分析を行い,8つの価値成長の認識的要因とその構造を示す因果モデルを得た.こうして得られた二種類の要因を統合して分析を行うことで,人工物が備える価値成長の手段的要因ごとに,価値成長の認識過程を示す因果モデルが異なる構造をとることを示した.