抄録
千葉県南房総市に位置する石堂寺の多宝塔には千葉の彫工「波の伊八」が制作した16枚の脇間彫刻が取り付けられていた。しかし現在では劣化防止などのため取り外され、本堂内にて保管されている。これらの彫刻は多宝塔に取り付けられてこそ意味を持つよう制作されており、現状は彫刻の本来的な意味を伝えるには不十分であると考えられた。本研究はそれらの3Dデータを取得し、取得したデジタルデータを用いて、①3Dプリンターを用いたハンズオン復元模型、②デジタル上での視点再現動画、を制作し、本来の状態の仮想復元を試みた。制作物は当該寺院にて行われたイベントの際に公開し、来場者から質問紙による評価を行った。評価の結果「彫刻に対する印象が変わったか」や「当時の様子をイメージする際の助けになった」という回答が約9割得られるなど、彫刻を取り付けていた当時の様子を伝えていくことに十分な成果が挙げられたと考えられた。本研究により、潜在化した歴史的造形資源に対し3D 技術を用いて復元・展示することで本来の魅力の共有化に寄与できることが伺えた。また、データの品質向上や新たな活用法の検討など今後の展開の可能性が期待できると考えられた。