抄録
伝統的工芸品とは、美術品のように展示、鑑賞するものではなく、多くの人の目や手に触れることでこそ、価値が向上するものであるといえよう。しかし、今日では、多くの伝統的工芸品が、生活様式の変化により人の目につかない場所に収納されている場合や、伝統的工芸品が持つ魅力や価値を使い手が認知しないまま衰退を余儀なくされている状況が多く存在する。作り手側においても、需要の減少、職人の減少などの問題を抱えている。本研究で取り上げた千葉県指定伝統的工芸品である「万祝」も例外ではなく、人びとの認知度不足によりその歴史的、文化的価値が潜在化し、伝統的技術、技法が消失しつつある。そういった状況のなか、現代において、作り手と使い手がともに万祝を貴重な地域資源として再確認・再認識することが求められている。本研究では、「万祝」の型紙の図柄をベクター形式でデータ化することでデジタル資料として保存・記録するとともに、万祝の共有化に資するベクターデータの活用方法を模索し、技術的に職人を支援することや使い手がより身近に万祝に触れられるための製品デザインを行うことを目的とする。