筆者らは新潟県長岡市与板町において街の雰囲気や印象を伝える地図の作成を進めてきた。第一稿で筆者らは、豊かな街歩き体験を通して、街の雰囲気や人々が感じ取る印象を表現した地図を制作するための方法論について考察した。本稿ではフィールドワークやワークショップを経て得た基礎データを、どのように地図に落とし込むと街の雰囲気や印象を効果的に伝えられるのかを、制作プロセス、装丁についての思想、そして完成した両地図について記述しまとめる中で探る。制作した、「あやしい」がテーマの「よいたあやしいまっぷ」、「かわいい」がテーマの「よいたかわいいまっぷ」の両地図に筆者らは、それぞれ「巻物」「手紙」をコンセプトとした、通常のマップとは異なる特殊な装丁を施した。テーマに合わせ装丁や地図デザインに工夫を施すという手法は従来の観光地図においても、印象の補強のために有効なものであるが、特に街の雰囲気や印象を伝える地図を作成する際においては、そのテーマに合わせ装丁や地図デザインに工夫を施すことは非日常性やストーリーを感じさせ、街を歩く際のテーマへの没入感を演出するために効果的である。