デザインプロジェクトにおいて、参加者全員の「共感」は極めて重要である。しかし、実際の現場と従事者間には各種コミュニケーションギャップが次々に発生し、誤解やミス、軋轢などマイナス要因だけではなく、魅力的なシーズや課題解決策などプラス方向すら気づかないことも多々ある。このことは、地場産業ではより深刻である。デザイナーの役割は限られ、先方のリクエストと最適解が異なったとしても、少人数・短納期・低予算の中で、より良い解決策を提案する余裕はない。人手不足・職人の高齢化・関連業種の廃業など、地域課題も大きな影響を及ぼしている。これらの問題に対峙するために、各自のニーズ・シーズ・スキル・課題などを知った上で現場の人々の間に立ち、共感を喚起してきた。中でも「デザイン言語」「製造現場言語」の同時通訳はたいへん有効である。20年来のクライアントに潜んでいた、新しい課題の掘り起こしにも成功した。メーカーからの要請は最終製品でも試作でもなく、生産管理と製造工程における「カイゼン」のプロセスデザインであった。ここまでの経緯と、新プロジェクト「デジタルファブリケーション技術による補助具デザイン」について解説する。