著者の所属する公立はこだて未来大学(以下、本学)は、地域貢献に資する研究の柱としてマリンITを研究の重点領域に指定している。マリンITとは、ITの導入による持続可能な沿岸漁業(IT漁業)に関する取り組みの、本学における呼称である。
;著者は、このマリンITの様々なシステム開発に情報デザインの専門家として参画してきた。本稿は、1章で本学がマリンITに取り組む意味について考察する。そして2章では、そのケーススタディとして、島根県海士町のイワガキの養殖漁業者をパートナーに開発したiPadアプリケーション(以下「本アプリケーション」と記述する)のデザインプロセスとUI設計について記述したのち、3章で大学でデザインを研究する者がフィールドでデザイン実践を行うことの意味について論じる。