カンボジアの首都プノンペンでは、植民地時代からシハヌーク政権時代にかけて行われた街区の形成や開発プロジェクト、当時の建築が現在でも都市全体の性格を規定している。一方で、クメール・ルージュ政権の後、首都に人口が戻り始めた1980年代を堺に、それまであった民族ごとの棲み分けは解体された。そして、1993年に再び独立を果たすと、国際NGOや観光客が増えたことで海外との交流が盛んになり、徐々に地区ごとの特性が現れるようになった。2000年代以降、歴史的な建築物の用途変更が各地で行われているが、その目的や方法は多様であり、総合的な都市計画を欠いたまま都市が無秩序に拡張していくことで、価値のある建築物の解体や、スラムの形成が加速することが危惧される。本研究では、地区ごとの歴史性や現状を調査・分析することで、地域地区の形成や景観の保存という観点も考慮した都市計画が必要であることが明らかになった。