1960年代以降の電子機器の発達,さらに1990年代のPCの普及によりデザインが手仕事から分離されつつある状況に対して,V.フルッサーはプログラムされたソフトウェアへの「従属(Subject)」を脱却し,自らの構想を「投企(Project)」することで新たな可能性に開かれる思考の必要性を提起した。本稿では彫刻制作者の視点から素材に自らを投企する思考に焦点を当て、その思考や感覚を他者に伝えることの意味についてワークショップの実践報告と分析をもとに考察する。彫刻に触る鑑賞活動を中心としたワークショップでの子どもたちの姿からは,制作者の思考や感覚が触覚や嗅覚,聴覚など様々な鑑賞者自身の身体による感覚を介して伝わるものであることが示された。制作者の思考や感覚を伝えるためには,物事を言葉として「理解(understand)」するわかり方ではなく,鑑賞者が自らの経験や感覚にもとづき身体で納得し,関係に開かれていく「了解(comprehend)」を触発する方法と,制作者と鑑賞者の相互的な関わりの場で生まれる新たな言葉が必要である。そしてその言葉を探ることは,制作者自身に本人も自覚していない思考や感覚を意識的に問い直させる意味を持つ。