デザイン的思考方法は、社会や産業にどのような影響を与え、変容させ、そして改革に導くのか。筆者は地域コミュニティと地場産業において、さまざまな実践をおこなってきた。この間、プロジェクトに関わる当事者間に共通認識を持たせるために、閉じた系で使われている用語を平易に解説する「翻訳」行為、制作プロセスの「開示」、こまめな情報共有による「場の意識」醸成などを見い出した。「共感をデザインする」各手法である。このことにより、デザイナー含む当事者たちは同じ言語で同じ場を共有できる。自らの課題解決に対して、複層する視点を得、俯瞰して眺められるようになる。
一人称的な狭い視点を離れ、二人称として相対的な視野を得た場合、その先にできることは何だろう。デザイン成果物として、より汎用性を持ったアウトプットを得るには、どのような試行錯誤が効果的だろうか。
美術家川上りえとの共同プロジェクト「アーティストという迷宮」における試行錯誤と成果を通して、デザイン的思考方法を一個人に対して実践した場合の成果、言語表現と視覚表現の相互補完による共感、アートにデザインが成し得る多くの可能性について提示する。