「思考の余白」とは,製品やサービスを使用する際に,ユーザーの意思がどれだけ介在できるのかを示した,製品設計における新しい指標である.これは,製品やサービスを介してユーザーが目的を達成するまでの過程において,“創意工夫がどの程度許されるのか”や,“手間や労力をどの程度必要とするのか”であると言い換えることもできる.すなわち,昨今の製品やサービスに多く見られる電子化や人工知能化に伴う自動化は,思考の余白を削減していると考えることができる.
本研究は,目的達成までの行程に手間や労力を組み込むことで,“やりがいや楽しさの創出”,“愛情や愛着の生起”などもたらすことで知られる「不便益」の概念をベースにしている.そして、その不便益を生み出すことを目的に,「思考の余白」を活用したデザインワークを実施検証することで,利便性の追求とは異なるデザイン理論の構築を試みた.