抄録
企業の人件費が高まり続ける現在,サービス業の利益率を高めるにはデジタル化が不可欠である。キャッシュレス決済,自動レジ,ロボット・デジタルヒューマンによる接客など,多岐にわたって技術導入が進んでいる。しかし,デジタル化によって,人間的・感情的なコミュニケーションが失われることを毛嫌いする消費者が存在するため,企業はその対応に追われている。今後はデジタル化した接客の中に人間的・感情的なコミュニケーションを導入する,顧客経験のデザインが重要な課題となる。しかし,人間のスタッフで“正解”とされる接客をデジタル化したスタッフ(以下,デジタルヒューマン)にそのまま適用することが同様に効果を発揮するとは限らない。特に,顧客の名前を呼ぶ・ふと目を逸らすというような,人間の繊細なコミュニケーションを機械に実践させることは極めて難しい。そこで本研究は,「人間の繊細なコミュニケーションをデジタルヒューマンに適用しても,同様の効果を得られるか?」というリサーチクエスチョンを設定し,ランダム化比較試験で検証した。結果として人間の接客の正解をデジタルヒューマンに導入することは危険であることを示した。