抄録
本研究は、筆者自身が網膜色素変性症と診断されたことを背景とした当事者研究である。現状として、中途視覚障害者が抱える心理的負担が大きく、そのケアが十分ではないという問題が生じている。筆者自身が心理的負担の中でも記憶を振り返る手段が減少することに対して不安を感じていることから、記憶の強化と再生に着目した。目が見えている状態から目が見えなくなっていく視力のグラデーションの期間に、記憶を強化することが目的である。この目的を実現するために、視覚に依存しない五感を用いて、周りの人とコミュニケーションを行うことによって、記憶を振り返ることができるシステムを制作した。これにより、障害の有無、種別に関わらず、記憶を共有と振り返りが可能になると考えた。視力低下段階において記憶を強化し、中途視覚障害者が前向きに生きるためのデザイン提案である。