2014 年 61 巻 2 号 p. 2_57-2_66
ユーザーの要求を取得しこれを実現するための要件を定める活動は,役立つ人工物をデザインするためのひとつの基盤である.要求・要件の取得には複数の方法があり,デザイン活動の段階に応じて選ばれる.本研究では,デザイン実務に役立つ知見を得ることを意図し,調査から評価までのデザイン過程における要求・要件の取得方法の特性について,自転車のデザイン活動を対象に考察した.考察した方法は,ユーザーの利用実態の非交流的観察,既往アンケート調査のレビュー,利用状況の分析的想定,機能試作車の走行実験,来店客への非構造的インタビュー評価である.考察の結果,利用状況の分析的想定の有用性と限界,プロトタイピングを行なう場合の留意点等,各方法の特性に関する知見を得られた.デザインされた自転車は目的との整合性があり,日本における自転車利用促進に資する可能性があることが確認された.