2014 年 61 巻 2 号 p. 2_77-2_84
「旧三潴銀行」(1909(明治42))などの明治西洋建築に見られる、アーツ・アンド・クラフツないしはアール・ヌーヴォーの装飾図柄がデザインされた金属製打出天井板の来歴と詳細については、これまで解明されていなかったが、同種の建築資材である「濠州製鋼鐵製特許天井板」が、東京の藤原商店によって輸入され、東洋一手販売されていたことが判明した。また当時の建築学会機関誌「建築雑誌」には、この天井板を採用した西洋建築の複数の事例が報告されるなど、装飾意匠要素として注目された建築資材であったことも判明した。こうした考察から、「旧三潴銀行」の輸入金属製打出天井板の導入とその室内意匠の指導には、「旧福岡県公会堂貴賓館」に同種の天井板の導入実績がある福岡県の土木課建築主任技師であった三條栄三郎の協力があったのではと推定している。