2018 年 65 巻 2 号 p. 2_31-2_40
本研究は,中国湖南省隆回県における花瑶族の女性の平服を取り上げ,そこに内包された生活文化の特質を明らかにすることを目的としたものである。現地調査により収集した167点の実物資料の整理・分類ならびにそれらの制作・使用に関する諸相についての聞き取り調査に基づき考察を行った。その結果,以下の知見を得た。(1)花瑶族の人びとは,周囲の動植物の習性や特徴を観察し,健康・成長・長寿・裕福などの生活願望を込めて平服に刺繍によって紋様を施した。(2)自然から得られた素材を存分に活用し,最終的には,大地へ還元する資源循環型の生活をつくりあげてきた。(3)平服の制作と使用を通して,家族・集落だけではなく,地域社会において活発なコミュニケーションが行われていた。(4)平服の制作と使用のみならず,洗濯・乾燥・保管などの行為には,時間意識・空間意識と連動した生活リズムが反映されている。