2020 年 67 巻 2 号 p. 2_1-2_10
革新的な製品アイデア創出のために近年注目されるものに,ビジョニング,すなわちある未来の状態を想像した上で,それを実現するための製品アイデアを考えるようなアプローチがある。本研究はそのビジョニングについて,創造的認知研究で議論される想像の知見に依拠し,その認知プロセスの説明を試みた。13の事例を対象とした定性事例研究から,次の知見を導いた。ビジョニングとは,ビジョンの想像と,そのビジョン実現要素としての製品の想像という2段階の想像の過程によって,そしてそれぞれの想像における概念の組み合わせ試行によって,革新的な製品アイデア創出に貢献するものと考えられる。そしてその製品アイデアの革新性とは主に,①製品想像の際に選択されるビジョン,そのビジョン想像の際に選択される,②開発者にとっての希望的要素,特にそれがどれ程外部情報に依拠したものか,③未来の状態,特にそれが未来の企業の状態よりも市場の状態であるか,これらよって導かれることが考えられる。