デザイン学研究
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未来洞察に関する研究の体系化
―ネットワーク分析を用いた文献研究とデザイン組織に関する考察
長尾 幸郎
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2023 年 70 巻 2 号 p. 2_37-2_46

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抄録

 未来洞察(Foresight)とは、現時点で活用可能な情報・知識をベースに未来を合理的に展望し、中長期ビジョンを参加型アプローチで作成することである。Web of Scienceに収録された論文からネットワーク関係を構築した2,586本の論文を分析し、学術研究の全体俯瞰と変遷を分析した。1990年代に各国の技術政策で活用が拡がった。2000 年代に国連等からレポートが発行され、未来洞察の基礎がつくられた。2010年代以降は、企業のイノベーション創出に向けて、事業計画以外の戦略的オプションの検討や環境問題等の長期的テーマの研究に関心が移っていった。さらに2020年以降は、未来洞察活動にて柔軟な戦略を立て、同時に迅速な意思決定による組織変革を連携して捉えることの重要性を指摘した論文が出てきている。また、デザイン組織でも未来洞察活動が重要な役割を果たしてきている。そこでは複数の事業部門と共に、未来社会の全体像を示しながら戦略的オプションの提案が求められている。今後は、急速な社会変化にも迅速に対応できる流動的な組織づくりの構築と、社内外の関係者と共にプロジェクトを牽引していくファシリテーション能力が求められる。

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© 2023 日本デザイン学会
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