本研究は,右肩上がり手書き文字の印象について評価するために二つの実験を行った。実験1では,大学生20人に0度から36度まで右上がりになるように配置した手書き風フォントのポスター画像の実験刺激を提示した。実験参加者は,その実験刺激の文字の印象について形容詞対を使って評価するように求められた。その結果,右肩上がりになるように配置された手書き風フォントには美しさの印象を向上させる効果は認められなかったが,躍動感に関係する印象は強められることが示された。実験2では,実験1の結果が手書き風フォントに特有なのかを調べた。大学生20人に実験1と同様のポスター画像の実験刺激を提示し,その実験刺激の文字の印象を評価するように求めた。実験刺激は,手書き風フォント,明朝体,ゴシック体の3種類と,文字の角度は0度,12度,24度の3条件を用意した。その結果,右肩上がりによる躍動感に関係する印象の向上はすべてのフォントで共通していること,その効果は手書き風フォントで最も強く認められることが示された。