2025 年 72 巻 1 号 p. 1_21-1_30
本研究では,病院職員の日常を撮影した写真展に対する患者や職員の評価および捉え方を明らかにし,医療現場における患者職員間および職員間の関係構築への影響を探ることを目的とする.本研究は,筆者が企画に携わりながら,参与観察やアンケート調査を実施した実践研究である.結果,患者・家族による不安軽減や職員への親近感,職員の働く力に関する一定の評価が得られた.さらに,本展示からは,病院や職員の多様性や人間性が読み取られ,肯定的感情を伴う心理的体験,省察的視点,他者への視座,コミュニケーションといった関係構築のきっかけがもたらされたことが確認された.患者職員間および職員間の関係構築に向けた写真展の有用性として,1)患者および職員をエンパワメントする医療環境の形成,2)患者職員間および職員間のコミュニケーションのきっかけ,3)患者職員間の心理的距離を近づける役割,4)患者職員間および職員間の相互理解の促進として機能するという仮説が得られた.