人間が生態系の一員としてのヒトの時代には、環境教育の必要はなかった。人間が生態系からはみ出し、いろいろな異なった立場で利己的に環境とかかわるようになってきたため、環境教育が必要となった。環境教育は、自分自身の理解と人と人、及び環境とのかかわりの理解である。この基盤はまず自然と五感でふれ合う原体験である。学習により、原体験と知識とが結びつき、組織化されたとき、それは生きてくる。この過程は、分裂と形態形成により組織や器官が分化しはじめる生物の発生初期に例えることができる。原体験は細胞分裂であり、学習は形態形成であり、これにより組織や器官が分化し機能するようになる。環境教育は生涯教育の視点にたって、発達段階に合わせた学習が必要である。すなわち、幼児期はしつけと原体験、児童期は原体験と身近な自然の体験的な理解、青年期はグローバルな視点で環境を捉えたり、抽象性のある問題をとりあげ考察できるようにしたりすることが望まれる。