抄録
文部省学習指導要領 (以下指導要領と略称) は約10年毎に改訂され, 現在次期の指導要領の改訂に向けての作業が進行中である. この間指導要領は学校教育だけでなく大学入試を通じて高等教育や当面する学歴社会にも大きな影響力を持ち続けてきた. この重要な意義や使命を持つ指導要領改訂に向けての作業日程や教科課程審議会を頂点とする審議の在り方は毎回の改訂に認められてきた姿勢と大きな変革は見られず, 果たしてこれで『生きる力』を存分に発揮し, 新世紀を担っていくことが十分に期待できる人材の育成が可能なのだろうか. 学習指導の項目や授業時間数の配分に慎重審議がなされているものとは思うが, 例えば最近の科学技術の進歩や学習心理学などの研究成果などが, どのような形で, どのようにまた『生きる力』に反映されているのだろうか. 指導要領改訂作業の進行状況の内に感じ取ったいくつかの課題に私見をを交えつつ考察したい.