抄録
本考は、研究機関や大学などが科学技術ニュースについて発表する広報資料(プレス・リリース)について、筆者自身の記者経験と主に理系大学院生や理系大学院を修了した社会人を対象として北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(以下、CoSTEP)でサイエンス・ライティング演習を設計、講師をした経験に基づき、その課題点を検討した。プレス・リリースの多くは分野がわずかにでも異なれば理系大学院生ですら理解困難であり、これが一つの要因となって、コミュニケーションの断絶、ギャップが発生し、科学ニュースが世間に伝わらない、また科学と市民の乖離を生んでいると考えられる。プレス・リリース作成やそれを基にしたパブリック・リレーションには、科学について広く深い知識を持ち、かつサイエンス・ライティングやパブリック・リレーションの専門教育を受けた人材が必要であるが、そうした教育技術開発は途上であり、急務であると考える。