抄録
本研究は「科学教育の文化研究」に属するものである。民俗学的な視点から文化について調査を行ったところ,「科学教育の文化研究」を進めるに当たって,「社会構造」や「精神構造」にも配慮する必要があるという示唆を受けた。また,それらに加えて日本人の,「自然観」,「土着科学」,「教育活動」について調査した結果,これらの背景には共通して仏教思想が見られた。日本での科学教育実践をリードしてきた筑波大学附属小学校理科部の実践の中にも,調査と一致する仏教思想的特徴が見られた。このことから,日本において科学教育の文化研究を進める上では,潜在的・文化的指針として仏教思想を考慮する必要があると考えられた。