抄録
本稿は,我が国における統計の学術的多様性や現代化時代の統計教育の捉え方について概観しながら,数学教育における統計指導について検討するものである。統計に関する研究者は幅広い学問領域にわたっており,数学と統計学の関係も複雑な様相を呈すが、このような状況の中で,数学教育において統計指導をどのように位置づけるのかを考えることは数学教育学研究の重要な視点であると考える。統計があらゆる学問領域で重視されていることを踏まえると,数学教育におけるこれからの統計指導では,確率論を根底に置く数理統計に重点を置きつつも,これまでは数学の範疇とは捉えにくかった内容にも着目していく必要があると考える。