抄録
本研究の目的は、日本の算数科授業における相互作用の構成の特徴を、新しい学習内容の導入場面に焦点を当てて明らかにすることである。そのために、まず4局面からなる「導かれた焦点化パターン」という相互作用を捉える枠組みを創出し、経験豊富な教師による一連の算数科授業から局面の進展を特定した。次に、各局面が進展する上での教師による「焦点」の構築の詳細を、Sfard(2000)の焦点分析を援用して分析した。そして、授業後の児童インタビューにみる学習者の観点と構築された「焦点」との関連を考察した。その結果、教師による「焦点」の提示が、授業間及び授業内における局面間の移行の契機となっていることが明らかになった。「焦点」の構築による教師の導きは、必ずしも児童の主体性を削ぐものではなく、むしろ、新たな学習内容の定式化に向け、児童のみの自由なやりとりでは出てこないような思考の広がりや深まりを生むことを可能にする重要な働きを担っていた。