抄録
経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)では,2000年の第1回調査から2012年の第5回調査まで,フィンランドは常に上位にランキングされており,教育先進国として世界中から認知されている。これは教育の平等性の実現を目指してきた長年にわたる教育改革の賜である。特に学力低位層の割合が少ないことはよく知られているところである。一方,上位層の児童生徒に対する教育がフィンランドの教育界の課題のひとつであったが,近年この課題に取り組む動きが出てきた。本研究は,このフィンランドの「才能ある児童生徒の数学教育」に注目し,現地で調査した結果から,日本における「才能ある児童生徒の数学教育」に方向性を見いだすべく分析したものである。