抄録
現行の中学校学習指導要領では,浮力に関する学習は第1学年で取り扱うことになっている。一方,現在の大学生が中学生時代に使用していた教科書は,旧学習指導要領準拠であったため,浮力に関する学習は発展的内容として限定的に取り扱っていた。本研究では,このような世代の大学生を対象に,浮力に関する認識の実態を明らかにするために概念調査を実施した。その結果,高等学校において物理Iを履修していた学生が約9割の集団においても,「浮力」の意味を適切に説明できた学生は約5割,「船が浮かぶ理由」を適切に説明できた学生は約2割であった.これらの結果より,理系の大学生においても,公式やキーワードを断片的に暗記しているのみであり,浮力や浮力が関連する現象を適切に説明することに課題がある学生が多いことが明らかとなった.