算数科におけるメタファー思考の促進を取り入れた授業に関する事例研究

―第5学年における継続的な指導とその省察を手がかりとして―

抄録

本研究の目的は，教師Aによる省察を手がかりとして，算数科の授業において長期的にメタファー思考を促進する指導を積み重ねた際の成果と課題の一端を明らかにすることである．教師Aによる省察からは，主に以下の3点が述べられた．1点目に，学級全体としての緩やかな変化として，お互いを受容する風土の醸成，相手を理解しようとする他者意識への影響などがあったことである．2点目に，児童による思考の様相として，「何らかの関係にたとえるなど，馴染みのある例に見立てて考える」や，「物語を付けて考える」などの5つが確認されたことである．3点目に，指導上の難しさ・悩ましさとして，メタファー思考を促進することによって生じる状況をいかに捉え，どのように解決すればよいかがわからなかったことである．