抄録
NPO和算を普及する会は毎年「算額をつくろうコンクール」を開催している.参加資格に制限はなく,算数や数学を学ぶ生徒にとって良い機会と考える.「算額」とは江戸時代に花開いた文化の一つ「和算」のもので,算術の能力の向上を神仏に感謝し,算術の問題を絵馬に書いて奉納したものである.これを現代に蘇らせたのがこのコンクールであり,通常では問題を“解く側”である生徒が,問題を“つくる側”を体験できる.私はこれまでこのコンクールの審査員の一員として関わり,直近13回分においては,生徒のつくった問題の面白さや工夫について分析してきた.実際の算額を掲げた昔の人々がそうであったように,生徒達もその図や数値に創意工夫を施し,楽しみながら問題をつくれている.中には知識不足から誤答のまま提出される作品もあり,その生徒は悔しさから,知識欲を向上させた事例もある.このコンクールは学びの原動力を授ける機会になっている.