本報告は,TIMSS1999 理科授業ビデオ研究で収録された授業で,一般公開されている授業の一部を事例として授業分析を行ったものである。理科授業の教師と生徒のコミュニケーションについて談話分析を用いることで,教師の支援によって生徒の理解が進んでいく過程を明らかにすることを目的とした。分析単位は藤井(1983)の教師の発問と対応する生徒の応答を1単位とするムーブを援用した。事例として挙げた授業のグループ活動において,生徒の理解が進む際の教師の支援は,観察結果の確認,観察結果と既習事項を用いた判断,実験条件の確認,そしてそれらを学習のめあてに向かって整理することであった。ここから授業において生徒の理解の向上をはかるには,追加の説明やヒントによって生徒の応答を引き出すだけではなく,それらの応答を一方向に整理し,論理的に結び付けることが重要であると示唆された。