2010 年 25 巻 3 号 p. 81-84
昭和 22(1947)年に発行された文部省著作中学校理科教科書『私たちの科学』シリーズの 1 冊である『火をどのように使ったらよいか』の教育内容の起源を分析した。その結果,次のことが明らかになった。(1)科学史に関する内容は,戦前の我が国の理科教科書にはまとまった形で教育内容として存在せず,執筆するにあたってアメリカの教科書を参考にしていた。(2)一方で,応用科学に関する内容は,昭和 6(1931)年「中学校教授要目」下の科目である「應用理科」の教科書により共通する内容が含まれていた。(3)約半数の節では,実験が活動として存在しており,そこでは主に科学史や応用科学に関する内容との相互理解を意図した内容が扱われていた。こうした実験内容は日本,アメリカいずれの教科書にも見られなかった。