1989 年 3 巻 6 号 p. 33-
子どもの自己実現を図る科学教育にするには、「よくわかる理科 (数学)」という言葉でしめされるような認知的側面 (学習内容面) での指導と、子どもに成就感を与えるような問題解決活動的側面 (学習方式面)での指導のあり方を検討する必要がある。前者の場合を例にとれば、現象的世界から本質的世界へと子どもに透視させることなく、彼らの眼を現象的世界にとどめておいたり、逆に本質的世界で使っている難解な用語や記述を子どもに強要したりして、混乱させている。山を登るに従って下界が広がり、すばらしい展望が見えてくるはずなのに、山に迷いこみ、視界のきかない授業も少なくない。また、科学の内容理解に追われ、「科学とは何か」という科学の性格理解が十分でないのも、子どもの学習意欲を減じる一要因であろう。さらに、問題解決といっても、子どもにとって真の問題意識になり得てない場合も多い。助け合い、支え合う学習集団づくりを通して、互いに「わかり合う」授業づくりが、学習を高めるのにつながるのではあるまいか。