抄録
これまで地層中の砂質津波堆積物を扱った論文のうち,堆積環境が浅海域および沿岸低地であるものについて,著者らがなにを根拠に津波堆積物であると判断したのかについてまとめた.根拠は大きく分けて(1)砂層の分布範囲が広い,(2)歴史記録と年代が一致する,(3)特徴的な堆積構造がある,(4)地殻変動を伴う,(5)特徴的な構成粒子を伴う,の5つに分けられる.地層中の津波堆積物を識別するには,現世の津波堆積物の観察が重要だが,地層としてそのまま保存されないものもあること,過去と現在の海岸線の条件が違うことに注意が必要である.すべての津波堆積物に適用可能な識別基準はなく,根拠の組合せや堆積場の条件わけが必要となってくると考えられる.