堆積学研究
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総説
津波石研究の課題と展望II —2009年以降の研究を中心に津波石研究の意義を再考する—
後藤 和久
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2012 年 71 巻 2 号 p. 129-139

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抄録

津波石は,低頻度巨大津波のリスク評価材料の一つとみなすことができる.本稿では,近年めざましく進展した研究の現状を整理し,課題と将来の展望をまとめる.2009年以降の津波石研究の大きな進展は,最近の津波または台風などの高波により運搬された巨礫群の記載事例が増え,その実態が詳しくわかってきたことと,理論的または数値計算による津波石の認定および運搬過程の理解が進み,津波石を用いた水理量推定の試みも始まっていることである.一方で,津波か高波のどちらで打ち上げられたのかが不明な巨礫群の報告も相次いでいるが,両者を識別できる確たる手法はまだなく,多くの巨礫群について議論が続いているのが現状である.津波石は,古文書記録や砂質の津波堆積物などと並び,歴史・先史津波の発生や規模を知る重要な物証であり,日本においてもサンゴ礁地域以外での津波石の認定方法の確立と,津波石を用いたリスク評価法の検討が急務である.

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© 2012 日本堆積学会
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