日本セキュリティ・マネジメント学会誌
Online ISSN : 2434-5504
Print ISSN : 1343-6619
研究ノート
AI 社会が個人にもたらす「価値」とそのトレードオフ: 日米欧の分析をもとに
小泉 雄介早田 吉伸
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2019 年 33 巻 2 号 p. 3-10

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抄録
「個人データは21 世紀の新たな石油である」と言われ、AI 社会では個人データの利活用による様々なサー ビスの提供や社会的課題の解決が期待されている。国内外のガイドライン類では、個人データの流通や利活用 が社会・企業・個人にもたらす「価値」について様々な言及がなされているが、それが誰に対する価値なのか を峻別した整理が必ずしもなされていない。本稿でAI 社会において尊重すべき「価値」のうち、個人データ の利活用が「個人に対して」もたらす価値について、ガイドライン類から抽出した結果、「自由」「平等」「安 全」「利便」の4 カテゴリに分類できることが明らかになった。個人がデータ利活用と通じてこれらの価値を 追求すると、個人にとってベネフィットがあるのみならず、リスクも発生するというトレードオフの関係が見 られる。例えば、監視カメラを設置して不審者の画像を取得することは「安全」に役立ち、社会的にも受容さ れている。しかし、更なる安全を目指して監視カメラ設置台数を増やしたり公道で顔照合を行うことは、個人 の「自由」に対して重大な萎縮効果をもたらす。これらベネフィットとリスクの間のバランスをどのように取 るかは、国や社会の在り方によって変わりうる。AI 社会において、個人にとっての諸価値間のバランスをど のように取るべきか、また個人にとっての価値と社会や企業にとっての価値との間のバランスをどのように取 るべきかは、今後の重要な検討課題である。
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