外科と代謝・栄養
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症例報告
噴門側胃切除術後6 年目に発症した脚気ニューロパチー,衝心脚気の1 例
春田 英律細谷 好則倉科 憲太郎宇井 崇斎藤 心瑞木 亨中野 今治佐田 尚宏安田 是和
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2013 年 47 巻 4 号 p. 99-104

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抄録

  胃切除術後6 年目に発症したビタミンB1 欠乏による脚気ニューロパチー,衝心脚気の1 例を経験したので報告する.患者は58 歳男性.胃癌に対して噴門側胃切除術,近位側空腸嚢間置法による再建術を受けた.術後極端な偏食はなく,通常量の食事を摂取していたが,術後の腹部CT 検査や内視鏡検査では,毎回間置空腸嚢内に食物残渣が多量に貯留していた.術後6 年目に四肢遠位筋優位の筋力低下,異常知覚,両下腿浮腫,易疲労感が出現した.症状は進行し,乳酸アシドーシスと急性心不全を発症した.血中ビタミンB1 値は10(正常値20-50)ng/ml と低値であり,ビタミンB1 の静脈内投与により症状は劇的に改善した.胃切除術後長期経過症例であっても,近位側空腸嚢間置法による再建術を受け,間置空腸嚢内に残渣が貯留している症例では,潜在的にビタミンB1 吸収障害を来しやすい可能性があり,脚気を含めた栄養吸収障害発症のリスクを考慮する必要がある.

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© 2013 日本外科代謝栄養学会
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