外科と代謝・栄養
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アミノ酸学会ジョイントシンポジウム
AS-1 癌支持療法としてのアミノ酸シスチン・テアニンの有用性について
土屋 誉
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2018 年 52 巻 3 号 p. 67

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抄録
 アミノ酸シスチン・テアニンは体内でシステインおよびグルタミン酸となり抗酸化物質であるグルタチオンの合成を促進する。また、IL-10を介したIL-6の抑制による抗炎症作用も有している。アスリートを対象にした研究ではシスチン700mg、テアニン280mgを含有する食品が強運動負荷後の炎症を軽減させ、免疫低下を予防する効果が報告されており、われわれは外科領域の臨床応用をめざし研究を行ってきた。外科手術の侵襲軽減効果について:幽門側胃切除症例43例に術前後10日間シスチン700mg、テアニン280mgを摂取する群とプラセボ摂取群に分けて比較すると、シスチン・テアニン群において安静時エネルギー消費量、IL-6、CRP、リンパ球比、顆粒球比、体温の術後からの変化の正常化が促進された。マウスの小腸擦過モデルを用いた研究では臨床と同様な結果を得ると同時に、小腸粘膜のグルタチオン量の低下を防止し、食事摂取量低下を防ぎ、運動量の回復が促進されることも確認された。抗癌剤の副作用軽減効果について:胃癌、大腸癌の補助化学療法としてTS-1投与予定症例70例に対し、TS-1服用前1週間から連続して5週間、シスチン・テアニンを摂取する群(CT群)としない群(対照群)に分けて1クール4週間における休薬、減量なしでの抗癌剤治療完遂率および副作用の出現頻度を検討した。1クール完遂率は対照群(35.5%)、に比してCT群(75.0%)が有意に上昇した。Grade2以上の副作用は顆粒球減少、口内炎、食欲不振、下痢倦怠感でCT群が少なく、下痢で有意差を認めた。マウスの5-FUによる小腸粘膜傷害モデルを用いた研究でもシスチン・テアニンの投与は粘膜障害を軽減し、下痢の予防、体重減少予防効果が得られた。さらにラットを用いた放射線全身照射の実験からシスチン・テアニンが生存率の改善、小腸粘膜障害の軽減などの放射線障害予防効果を有する結果が得られ、癌支持療法としての応用も見えてきた。また臨床においてシスチン・テアニンの長期摂取が悪液質予防効果を有すると推定される症例も経験するようになった。今後は『放射線治療、手術治療、抗がん剤治療、緩和ケア(悪液質予防)のすべての段階での癌治療における支持療法において長期にわたるシスチン・テアニン摂取によるQOLの維持、長期成績の向上』をエンドポイントにすえた臨床研究を展開していく予定である。
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© 2018 日本外科代謝栄養学会
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