外科と代謝・栄養
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ESSENSE ミニシンポジウム
EMS-1 当科におけるERASプロトコールおよび鎮痛対策の現状
石崎 守彦海堀 昌樹松井 康輔中竹 利知松島 英之井上 健太郎
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2018 年 52 巻 3 号 p. 73

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抄録

【目的】当科では2011年より肝切除におけるERASプロトコールを導入している。2012年より術後疼痛評価の研究を行い、その後NSAIDs内服による術後鎮痛効果の検討を行った結果につき報告する。また2014年~2015年にESSENSEプロジェクトの協力施設として参加し従来のERASプロトコールとの比較検討を行ったため、単施設での結果につき報告する。
【方法】1)2012年~2013年に当科で行った上部消化管・肝胆手術症例のうち、疼痛評価研究の同意が得られた82例(開腹肝切除34例、腹腔鏡下肝切除5例、腹腔鏡下胆嚢摘出術26例、開腹胃切除5例、腹腔鏡下胃切除12例)を対象とし、術前後にVASとPainVision™を用いて疼痛評価を行った。2)2014年に当科で行った開腹肝切除66例のうち、術後予防的NSAIDs投与群(n=38)と非投与群(n=28)におけるVASとPainVision™を用いた疼痛評価の比較を行った。3)当科にて肝切除を行った2014年~2015年までのERAS群(従来群、n=67)と、2015年~2016年までのESSENSE群(介入群、n=37)の2群間におけるQoR40の比較検討を行った。
【結果】1)開腹肝・胃切除においてPainVision™測定では術後1日目の痛みは7日目に比べ有意に高値を示したが、VAS測定では経時的な変化は見られなかった。腹腔鏡手術においては経過を通じて有意な変化は認められなかった。2)PainVision™測定においてNSAIDs投与群は非投与群に比べ術後3日目までの疼痛が有意に改善したが、SFMGでは術後創部の鈍痛および圧痛が全期間約40%で見られた。3)従来群と介入群における年齢71vs69歳、体重57vs62kg、腹腔鏡手術28vs26%、QoR40は第3病日156vs142点、第7病日136vs122点、と介入群で術後痛の改善傾向が見られたが有意差は認められなかった。
【考察】術後疼痛の客観的・定量的評価、QoR40による質の評価、ならびに術後予防的NSAIDs投与は術後鎮痛対策に有用と思われた。NSAIDs投与のみでは鎮痛効果に限界があり、現在は術後アセトアミノフェン点滴予防的投与を導入し術後疼痛の完全抑止を試みている。

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© 2018 日本外科代謝栄養学会
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