外科と代謝・栄養
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ESSENSE ミニシンポジウム
EMS-2 膵頭十二指腸切除術に対する多角的疼痛管理の導入と効果
眞次 康弘伊藤 圭子延原 浩中尾 三和子大下 彰彦板本 敏行
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2018 年 52 巻 3 号 p. 74

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抄録

【目的】ERASコンセプトは確実な鎮痛、早期経口摂取、早期離床による回復促進である。なかでも疼痛管理は経口摂取、離床やストレスに大きく影響する。我々は2010年より膵頭十二指腸切除術(PD)にERASプログラムを導入した。PDは高度侵襲手術で術後疼痛も強い。2014年から疼痛管理に持続胸部硬膜外麻酔とIVPCA(フェンタニル)およびアセトアミノフェン定時投与による多角的疼痛管理を行ってきたので報告する。
【対象と方法】対象は2014年7月から2017年12月までに経験したPD:72例。年齢:71歳、男:53/女:19例、疾患:膵管癌26例、胆道癌25例、嚢胞性腫瘍11例、その他10例。術式:PPPD:37例、SSPPD:28例、classical PD:7例、手術時間:483min、出血量:463ml.麻酔・疼痛管理;麻酔は静脈麻酔(プロポフォール、レミフェンタニル)+胸部硬膜外麻酔を原則。術後は持続胸部硬膜外麻酔(術後48時間)+IVPCA(術後72時間)+アセトアミノフェン定時投与(1000mgx4/day)(術後72時間)で行い、POD4以降はトラマドール/アセトアミノフェン合剤内服で管理した。術後嘔気嘔吐(PONV)予防目的で全症例に麻酔導入時デキサメサゾン:6.6mg(IV)、手術終了時メトクロプラミド10-20mg(IV)を行い、モサプリドクエン酸を術後1週間経腸もしくは内服投与した。疼痛スケールはPrince Henry Hospital Score(PHH)を使用し、1点以下(深呼吸で疼痛なし)を目標とした。鎮痛効果とPONVは看護回診時(3回/日)に聞き取り記録した。
【結果】中央値(4分範囲)で記載。鎮痛効果(各0-1点症例の%);POD1-am:66.7%、POD1-pm:82.8、POD1-night:80.0、POD2-am:76.8、POD2-pm:82.7、POD2-night:85.0、POD3-am:79.7、POD3-pm:84.7、POD3-night:85.2、POD4-am:81.7、POD4-pm:81.4、POD4-night:90.2でPOD1以降POD4まで66.7-90.2%の症例がPHH:1点以下を維持した。PONVは10例(13.7%)に認められ、うち5例は術後胃内容停滞を合併した。術後排ガスはPOD2(1-3)、排便はPOD3(2-3)、離床完了はPOD2(2-3)、固形食開始はPOD3(3-4)、術後在院日数は18日(14-32)であった。血液データ(POD1,3,5)はCRP8.1/20.4/10.9mg/dL、P-AMY199/27/14 IU/L、腹水ドレンAMYは2386/502/113 IU/Lであった。
【結語】PD術後の疼痛管理に持続胸部硬膜外麻酔、IVPCAおよびアセトアミノフェン定時投与を組み合わせた多角的疼痛管理(Multimodal analgesia)を行い良好な鎮痛効果を得ることができた。確実な鎮痛がERASプログラム運用に貢献した。

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© 2018 日本外科代謝栄養学会
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