外科と代謝・栄養
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特集「Bench to Bedside:基礎研究成果からみた臨床栄養管理への提言」
腸管不全とシトルリン投与
古形 修平米倉 竹夫木村 浩基前川 昌平森下 祐次佐々木 隆士
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2019 年 53 巻 6 号 p. 301-314

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抄録

 L‐シトルリン (L‐Citrulline : L‐Cit) は, 尿素回路・アミノ酸代謝・一酸化窒素 (Nitric oxide : NO) の合成などに関与する, codonで指定されていない遊離アミノ酸の1つである. 生体内における主な合成の場は腸管上皮細胞であり, その腸管上皮細胞の機能と密接にかかわってくる. 一方で, 腸管不全 (Intestinal Failure : IF) は, 種々の要因によって栄養および水分の吸収障害が生じ, 自己腸管による栄養療法のみでは健常状態の維持が困難な病態である. 有効な機能を有する腸管の絶対量が減少すると, L‐Citの血漿濃度が低下することから, 腸管の残存機能と血漿L‐Cit濃度は相関関係にあることが判明した. L‐Citの補充に関するさまざまな基礎研究および臨床試験の結果から, IFにおけるL‐Cit補充の有効性が考えられるが, L‐Citの生体内での動態は未解明な点も多く, 今後も引き続き検証が必要である.

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© 2019 日本外科代謝栄養学会
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