外科と代謝・栄養
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特集「医工連携がもたらす重度侵襲病態治療の最前線と近未来の治療」
ECMOによる敗血症集中治療の現在地
中森 裕毅亀井 政孝
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2020 年 54 巻 4 号 p. 175-179

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抄録

 体外式膜型人工肺 (extra‐corporeal membrane oxygenation, ECMO) とは, 血液を一度体外に導き (脱血), 血液に酸素を与え二酸化炭素を除去するというガス交換を人工肺にて行い, 再度血液を体内に戻す (送血) 装置である. ECMO自体が敗血症のリスク因子でもあり, 敗血症へのECMOは従来禁忌とされてきた. 敗血症におけるショックは血管トーヌスの低下に由来するもののみではなく, 敗血症性心筋症 (sepsis‐induced cardiomyopathy, SICM) と呼ばれる心原性ショックが併発している場合がある. SICMは可逆性の心筋症であり, 心機能の回復までの期間の全身の細胞レベルでの血液還流維持としてのECMOの活用は大いに期待される. しかしながら, ECMOは感染, 出血, 臥床といった問題点があり, 多臓器不全を合併する敗血症患者での施行には特に難渋する. 事実, これまでの敗血症に対するVA‐ECMOの治療成績は, 生存退院率が20%程度にすぎないという報告が多い. より細径でより血栓を形成しないカニュレやECMO回路の開発を医工学には期待したい. 医工連携によりSICMの予後改善の余地は大いにあると考える.

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© 2020 日本外科代謝栄養学会
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