2022 年 56 巻 2 号 p. 98-105
【背景】肝細胞癌に対する肝切除術の有効性は確立しているが, 発症年齢は一貫して上昇しており, 今後高齢者の手術症例の増加が推察される.
【対象・方法】2009年から2019年までに施行した肝細胞癌肝切除症例344例を対象とし, 高齢者 (75歳以上) 肝細胞癌肝切除症例の術後成績を非高齢者 (75歳未満) と比較・検討した. なお, 手術適応基準は, 全症例で残肝重量/体重比≥0.8%および幕内基準に準じた.
【結果】高齢者群で心疾患の併存や他臓器悪性腫瘍の既往が多かった. 術前アルブミン値は有意に低値であり, 全肝容積も小さかった. 手術成績, 術後合併症発生率, 在院死亡率や術後在院日数は2群間に有意差を認めなかった. 残肝の容積・機能変化, 無再発および累積生存率は2群間に有意差を認めなかった.
【結語】高齢者の肝切除術は, 非高齢者と同様の手術適応基準で, 同等の安全性・根治性を期待しうると考えられた.